祈りの巫女41
 儀式の最後にピンク色の花が編み込まれた花冠を授かって、それで儀式のすべてが終わった。この瞬間、あたしは大人になって、正式な祈りの巫女になったんだ。その場の緊張が一気に解けて、聖櫃の巫女や神託の巫女、その他名もない巫女たちもみんな笑顔であたしのそばにやってきた。あたしも自然に笑顔になって、まわりを見渡す。神殿の柱の向こうでずっと儀式を見守ってくれていた村の人たちも、あたしがそちらに顔を向けると笑顔と声援で答えてくれた。
 あたしは儀式の口上も動作も間違えなかったから、すごくほっとして、村の人たちの中にリョウの姿を捜した。母さまと父さまとオミ、マイラやベイクの姿も見つけることはできたけど、リョウの姿だけはどこにも見つからなかった。
 ちゃんと、見ててくれたよね。ちょっとだけ不安になって、もしかしたらそんな表情をしてたのかもしれない。聖櫃の巫女があたしの背中を叩いて、元気付けるように微笑んでくれた。
「ユーナ、すごくよかったわよ。もう一人前の巫女ね」
「ありがとう。聖櫃の巫女にそう言ってもらえて嬉しい」
「そうだわ。もうユーナじゃなくて、祈りの巫女、って言わなきゃいけないのよね」
 あたしはこれから祈りの巫女って呼ばれるようになるんだ。もちろん、神殿以外では今までどおりユーナでよかったんだけど。
「さあ、祈りの巫女、村のみんなにちゃんと姿を見せてあげましょう」
 あたしは巫女たちに背中を押されて、神殿の外に向かって歩いていった。その間にも、柱の向こうにいた村のみんながあたしに声をかけてくれる。祈りの巫女、祈りの巫女、って。石段のところまで来たとき、その下にはいつのまにか祝い料理の用意がされてた。あたしは本当に大勢の人たちの祝福を受けていることを知って、涙が出そうだった。
 あたしが祈りの巫女になるために、みんなすごくたくさんの仕事をしてくれてたんだ。儀式が執り行われている間に、何も言わずに料理を準備してくれた人がいる。誰にも見えないところで働いてくれた人がこんなにたくさんいるんだって。
「みんな、ありがとう……」
 あたしは独りで生きてるんじゃない。そう思えたことが、祈りの巫女になって最初の収穫だった。