祈りの巫女37
 あたしが苦しむから、シュウはあたしの記憶を封じてくれたの? あたしが大人になるまで。あたしが、シュウを思い出しても大丈夫になるまで。
「マイラは、あたしを恨まなかったの? シュウを死なせて、シュウのことを忘れてしまって」
「あの時ね、シュウがユーナを助けたあと、ユーナは泥だらけの身体で必死で村に走ってきた。泣きながら、シュウを助けて、って言って。あたし達はその頃まだこの家ではなくて、ユーナの家の近くに住んでいた。だからユーナの話を聞いて急いで助けに行ったわ。でも、あたし達はシュウを助けることができなかった。あたしも間に合わなかったのよ。だから、シュウを死なせてしまったのは、ユーナだけじゃなかったの。ユーナは必死であたし達に知らせてくれたんだもの。それにね、ユーナはシュウがあんなに大好きで、シュウが命を懸けて守った女の子だよ。そんな子を恨んだりできないわ。そんなことをしたらシュウが悲しむ。そう思ったら、ユーナを恨むことなんかできなかったよ」
 いつも、悲しそうな笑顔であたしに笑いかけてたマイラ。
 あたしが何歳になるのか、いつも気にしてたマイラ。
 マイラはあたしを見ながら、いつもシュウを見ていたのかもしれない。シュウの命を奪って、シュウの時間を止めてしまったあたしを見て、マイラはいつもどんなことを考えてたんだろう。
 シュウがあたしを助けてくれなかったら、今ここでマイラと会話していたのはシュウだった。あたしは今、シュウの時間を生きてる。優しくて、本当に優しくて、勇敢だったシュウ。あたしはシュウにもらった時間を大切にしなきゃいけないんだ。
 いつも悲しそうに笑うマイラ。あたし、マイラの本当の笑顔を知らない。あたしはマイラを幸せにしてあげたい。
 祈りの巫女になったら、祈りの巫女になってマイラのために祈ったら、マイラは笑顔を取り戻してくれる? あたしはマイラの笑顔を取り戻したい。マイラに笑って欲しいから、祈りの巫女になりたい!
 リョウ、あたし見つけた。自分が本当にやりたいこと。マイラを幸せにするのって、祈りの巫女にならなければできないことだから。あたしは、マイラを幸せにするために、唯一のことができる人になれるんだ。