祈りの巫女27
「ほら、ちゃんとユーナにはあるじゃないか。自分の仕事に対するプライドが」
 わざとだったんだ。リョウはあたしを怒らせて、あたしにそれを言わせようとしたんだ。
「あたし、祈りの巫女の仕事を馬鹿にされたくない。それがプライド?」
「オレだって狩人の仕事を馬鹿にされたら、今のユーナみたいに怒ると思う。自分の仕事にプライドが持てるって、それだけで十分すごい資格だと思うよ。実際、プライドのない大人もいるんだ。狩人の中にもいる。残念だけど」
「……そうなの? そういう人は、自分の仕事を馬鹿にされても平気なの?」
「平気なんだ。だからさ、ユーナは大丈夫だと思う。神殿のみんなも、今までずっとユーナを見てきたから、安心して宿舎を建ててくれてるんだと思う。不安だったら最初からそんな大変な仕事を始めようとは思わないんじゃないかな。たぶん落ち着くまでは他の巫女と一緒の宿舎に押し込めとくよ」
 リョウの話を聞いていたら、なんだか本当にリョウの言う通りのような気がしてきていた。リョウは不思議だった。いつでも、どんな時でも、あたしの気持ちを楽にしてしまう。あたしはリョウが大好き。いつも優しくて、いつも穏やかで、あたしのことを判ってくれるリョウが大好き。
 あたしが、リョウにたくさん優しくして、リョウのことを判って、リョウの気持ちを楽にすることが出来たら、リョウもあたしのことを好きになってくれる?
「リョウ、ありがと。あたし、リョウのことが大好き」
 きちんと言葉にして言ったことはあんまりなかった。
「ありがとう、ユーナ。……もう遅いから帰ろうな。送っていくよ」
 リョウは優しくて、穏やかで、あたしのことをいろいろ判ってくれる。
 でも、あたしと同じくらいには、リョウはあたしを好きになってはくれない。あたしが一番欲しい言葉は、くれない。
 リョウの優しさが残酷に思えて、すごく、痛かった。