祈りの巫女26
「でも、実際のところ神託の巫女の予言が間違ってたと思う人は、たぶんいないと思う。神託の巫女は間違えちゃいけないんだ。ってことは、たとえユーナがどんなにできの悪い祈りの巫女になったとしても、それが正しいことで、真実なんだ。神様が望んだ祈りの巫女は、どうしようもないできの悪い祈りの巫女だ、ってことになる。それを神様が望んだんだから、誰もユーナを責めたりはしないよ」
 ……なんか、リョウの言ってることはすごくめちゃくちゃな気がするのに、あたしは少し気が楽になっていた。
 神託の巫女はぜったい間違えたりはしない。だから、あたしがたとえどんなにできの悪い巫女になったとしても、それが祈りの巫女なんだ。だって、祈りの巫女はあたししかいないんだもん。祈りの巫女はすばらしい巫女のことじゃなくて、あたしのことなんだ。
「それにさ、たぶん誰もユーナに期待をかけたりしてないと思うよ。だって、ユーナはまだ12歳で、儀式を受けても13歳で、いきなり完璧な巫女になんかなれっこないだろ? みんなユーナの修行ぶりを今まで見てきたんだから、ユーナがどの程度の人間なのか、ちゃんと判ってるよ。だから、ユーナは今のままで、精一杯自分の勤めを果たしていけばいいんだ。だいたい祈りの巫女の仕事って、ただ祈るだけなんだろ? その祈りが神様に届いたかどうかなんて誰にも判らないんだ。多少できが悪くたってそんなに目立たないって」
 なんだか果てしなく馬鹿にされてる気がした。あたしのことだけじゃなくて、祈りの巫女まで。
「祈りの巫女は祈るだけじゃないもん! そりゃ、祈ることがほとんどだけど、ちゃんと勉強して、世界の仕組みとかも判って、それで祈るんだもん。祈りにだって種類があって、ちゃんと手順を踏まないと神様に届かなかったり、大変なんだから。ぜんぜん簡単なんかじゃないんだから!」
 あたしがそうリョウを怒鳴りつけて、でもリョウはぜんぜん驚いた風には見えなかった。ひと通り叫び終わって息をついた時、リョウはすごく明るい表情で、あたしに笑いかけた。