祈りの巫女23
「ユーナがよくてもね、これから先のことを考えたら、やっぱり1つ祈りの巫女の宿舎が必要なんだ。確か祈りの巫女が生まれるのは120年ぶりだろ? 位は聖櫃の巫女よりも高いし、世話係の巫女も一緒に住まないとならないし、そのうち他の巫女が修行にくることもあるだろうしね。今の宿舎だと、120年ぶりに新しく増えた祈りの巫女の個室を作るのが難しいんだ。突貫工事になっちゃったから、そんなに立派にできなかったけどね」
「そんな……あたし、個室なんか要らないし、世話係がつくなんてぜんぜん思ってなかった。自分のことは自分でできるもん。今までだってそうやって来たし」
「そりゃ、修行中は自分のことは自分でやらないといけなかったけどね。でも、これからはそういう訳にはいかないよ。祈りの巫女は、祈りの巫女に専念してもらわないといけないんだ」
 あたしは、祈りの巫女にならなくちゃいけない。
 今までなんか比べ物にならないくらいの重圧だった。あたしは、120年ぶりに生まれた祈りの巫女。巫女の位の中では守護の巫女に次いで2番目で、人々の祈りを神に届ける役割を負う。儀式を受けたら、あたしはもうそういう役割を担った、一人前の巫女として扱われるんだ。
 どんなにあたしが未熟でも、才能がなくても、儀式が終わればあたしはもう祈りの巫女なんだ。
「大丈夫だよ。ユーナがちゃんと住みやすいように、みんなでいろいろ考えて作ってるから。図面を見せようか?」
 あたしが黙ってしまったからだろう、気を遣って、セトが言った。
「いい、ありがとう。なんかびっくりしちゃった。……そうなのよね。あたし、自分のことだからピンとこないけど、今まで120年も祈りの巫女はいなかったんだもん。宿舎だって、祈りの巫女が住むようになんか、できてないよね」
「正直に言うとね、ユーナの儀式の日が決まるまで、誰もそれに気がつかなかったんだ。だから準備がぜんぜん整ってなかったの。もっと早く気付いてたら、ユーナの意見も取り入れて、もっとユーナが住みやすく作れたんだけどね」
「ううん、いいの。……ありがとう、あたし、帰るね。ここにいてもみんなの邪魔になっちゃうから」