祈りの巫女20
「ユーナはそのことを悩んでたの?」
「うん」
「そうね、母さまが思うのは、ユーナは今あせってそれを見つける必要はない、ってことだわね。祈りの巫女はすばらしい生き方よ。今考えなくても、祈りの巫女になって、たくさんの人を助けて、それを繰り返していくうちにいつか必ず見つかるわ。リョウは強くなりたくて自分の生き方を選んだけど、ユーナは自分に与えられた運命を辿りながら、ゆっくり自分のやりたいことを見つけていくのよ。ユーナが生まれたときに未来を見た神託の巫女は、ユーナのそういう人生を見ていたのだと思うわ」
 リョウも言ってた。どうせすぐに結論なんか出ないよ、って。あたしは、祈りの巫女になってからゆっくり、自分のやりたいことを見つけていけばいい。リョウはそういうことも全部判っていて、昨日あたしにそう言ったのかもしれない。
「あたしも、祈りの巫女は素敵な生き方だと思う。なりたいと思った人が全員なれるわけじゃないもん。あたしは、みんなが誇りに思えるような祈りの巫女にならなきゃいけないのね」
「そうね。でも、母さまは今のユーナで十分誇りに思えるわ。ユーナが今の気持ちを忘れない限り、いつかすばらしい祈りの巫女になれるはずよ」
 母さまはそう言ってくれて、あたしはとても嬉しかったけど、でもやっぱりどこかがもやもやして消えなかった。あたしよりもずっと巫女になりたいと思ってて、でもなれない女の子はたくさんいる。特に祈りの巫女になれる人はめったにいない。それなのに、あたしが巫女になってもいいの? ただ、神託の巫女が予言したってだけで、本当にあたしが巫女になってもいいの?
「母さま、あたし、神殿に行ってくるね」
「そう、気をつけて行ってらっしゃいね」
「はい」
 本当は、儀式の日までは神殿には行かなくていい。でも、じっとしているのがつらかった。どうしたらこのもやもやが消えるのか、できることを何でも試してみたかったから。