祈りの巫女18
 あたしはリョウの一番になりたい。
 何かになりたいと思って巫女にならないといけない。
 そうリョウは言ったけど、リョウの一番と、巫女になるために思う何かとは、たぶん違う。その何かを見つけなければあたしは祈りの巫女になれない。そしてたぶん、リョウの一番にもなれない。
 爪に、花びらの汁を塗る。一番きれいな巫女になりたいから。大好きなリョウに、一番きれいな巫女だって思われたいから。
「母さま、母さまはどうして父さまと結婚したの?」
 手を洗って、あたしは母さまのお茶の用意を手伝った。
「それは父さまが大好きだったからよ」
「父さまも母さまが大好きだったの?」
「そう。父さまと母さまは、同じくらいお互いを大好きだったの」
 あたしとリョウはたぶん同じくらいじゃない。あたしはリョウをたくさん好きだけど、リョウはあたしのことを少ししか好きじゃない。
「ユーナはリョウが好きなの?」
「うん、大好き。でもリョウは違うみたい」
「そう?」
「少しは好きだけど、大好きじゃないの」
 母さまが入れてくれたお茶には、昨日あたしが取ってきた花びらが、1枚だけ浮かべてあった。
「父さまは、どうして母さまと同じくらい、母さまのことを好きになったの? 母さまは何をしたの?」
 母さまはちょっと照れたような笑顔を見せた。