祈りの巫女19
「さあ、何をしたのかしらね。ただ、父さまのことが大好きだから、すごく父さまに優しくしたわ。父さまが困っていたら助けてあげようとしたし、悩んでいたら一生懸命に相談に乗ったの。でも、父さまのほうがずっと大人だったから、母さまはちっとも助けにならなかったのよ」
 あたしも昨日、一生懸命リョウの悩みを考えた。でもたぶん、あたしの答えもリョウの助けにはならなかった。リョウは大人だから、あたしがどんなに考えても、リョウを助けることなんか出来ないんだ。
「でもね、父さまはそれが嬉しかったの。母さまが一生懸命父さまのために相談に乗ってあげたから、父さまはそのことだけで嬉しかったのよ」
「……一生懸命が嬉しいの?」
「そう。ユーナも、リョウのために一生懸命になってあげたら、その気持ちはきっとリョウにも伝わるわ」
 あたしが一生懸命になれば、リョウはあたしを好きになってくれるのかな。あたしがリョウを好きな気持ちと同じくらい、リョウもあたしを好きになってくれるのかな。
「それからもう1つ。ユーナも大人になることかしらね。自分のことを自分でちゃんと考えて、少しずつ大人になっていったら、そのあとはリョウの悩みをきちんときいてあげられるわ。本当にリョウを助けることが出来たら、リョウもきっとユーナのことを好きになってくれるはずよ」
 昨日、リョウはあたしの悩みをちゃんと判ってくれた。そして、リョウ自身が経験したことから、1つ答えを教えてくれた。あたしが大人になったら、昨日のリョウみたいに相手の相談に乗ってあげられる人になれるんだ。そして、あたしがそうなったら、リョウはもっとあたしと話してくれるようになるんだ。
「ねえ、母さま。あたしは今、どうしても祈りの巫女になりたい、って思ってないの。リョウは強くなりたいから狩人になった。でもあたしには、リョウが思うみたいな強い気持ちはないの」