祈りの巫女7
「ランド! あなたすっごく失礼!」
「失礼なもんか。オレは事実を述べてるだけだ」
「あたしはヘチャじゃないもん!」
 もっと文句を言おうと椅子を降りかけたところ、リョウが割って入ってあたしの肩を止めた。
「ユーナ、もう遅いから家まで送っていくよ。ランドもあんまりユーナをからかうなよ」
「悪い悪い。ついおもしろくて」
「行こう、ユーナ。……何か話があるんだろ?」
 最後の方は耳打ちするみたいな小さな声で、あたしはランドに怒ってもいたのだけど、その怒りがすーっとおさまっていく感じだった。
 リョウが先に立って店を出て、あたしが後からついていく。リョウと歩くのは久しぶりだった。ほんの昨日まで、あたしは儀式の練習でずっと神殿に詰めていたから。
 今日、道で偶然すれ違わなかったら、こうして2人で歩くのはもっと先のことだったかもしれない。
「何も話さないのか? 早く話さないとユーナの家につくぞ」
 リョウの言う通りだった。小さな村だから、いつの間にか家のすぐ近くまできていた。
「リョウ、あたしね、子供の頃からずっと、おまえは祈りの巫女になるんだよ、って言われてた。あたしが生まれたときに神託の巫女が予言したんだって。……リョウは? リョウはどんな予言を受けたの?」
 リョウは振り返って、あたしの目をまっすぐに見て微笑んだ。
「オレも予言を受けたよ。だけど、予言の中身は知らない。父さんも母さんも教えてくれないんだ。ユーナにも教えてもらえない予言があるだろう?」
「うん」
 神託の巫女は、子供が生まれると必ず予言をする。その中でぜったいに教えてもらえない予言がある。それは、その子が将来誰と結婚するのかって事と、その子がいつ死ぬのかって事。