祈りの巫女4
「大丈夫そうね。ユーナ、あと10日あるけど、急に太ったり痩せたりしないように気をつけてね」
 マイラがちょっと悲しそうな顔で冗談を言ったから、あたしは笑うのを少しためらってしまった。
「平気よ。でも気をつけるね」
「ユーナも13歳になるんだねえ」
 何年か前から気が付いていた。マイラはいつでもあたしの年を気にしてるって事。あたしに年を尋ねるのは決まってマイラだった。
「ねえ、マイラ。祈りの巫女になったら、あたしは大人になって、今までと何かが変わってしまうの?」
 さっき、リョウに会ってから、あたしは少し不安になってたみたい。マイラを見上げてそう言うと、マイラはテーブルにお茶を用意してくれた。
「たいして変わりはしないよ。子供がそう思っているほど、人間は急に大人になんかならないからね。目の前にあることを1つずつ片付けていくうちに、ふと気が付くと知らない間に大人になってるの。あたしも、ユーナが生まれた頃にはまだ半分くらい子供だったし、今でも少し子供が残ってるよ」
「そうなの? あたし、マイラはずっと大人なんだと思ってた」
「あたしも子供の頃はそう思ってたよ。父さまも母さまもマイラが生まれたときにはもう大人で、ずっと変わらないんだ、って。……ユーナも、恋をして結婚して、子供が生まれたら判るかもしれないね」
 あたしが、恋をして結婚して、子供が生まれたら。
 マイラには子供はいないけど、恋をして結婚したからわかるようになったのかもしれない。
「大人になったらリョウともっと話せるかな」
 あたしがリョウのことを言ったら、マイラはまた少し悲しそうな、遠い目をして言った。
「……リョウは優しい子だからね。リョウももう少し大人になったら、たぶんユーナとたくさん話してくれると思うわ」
 マイラにはリョウも子供に見えるんだ。あたしから見たら、リョウはすっかり大人のような気がするのに。