祈りの巫女3
「そうなの。それじゃ、衣装合わせが終わったら少し話を聞いてくれない? あたし、リョウに話したいことがあるの」
「儀式が終わるまでは忙しいんじゃないのか? のんびりオレと話なんかしてていいの?」
「リョウと話すくらいの時間はあるもん」
「だったらマティの酒場においで。これからランドと落ち合う約束なんだ」
「違うの! あたしはリョウと2人で話がしたいの!」
 あたしがそう言っても、リョウはもう歩きかけていて、それ以上話をする気はないみたいだった。坂を降りていくリョウのうしろ姿を見送る。最近のリョウはなんだかそっけない。子供の頃から優しくて、今でもそれは変わってなかったけど、だんだんあたしとの距離が遠くなってる感じがした。
 リョウはどんどん大人になって、あたしとは違う世界の人になっていくみたい。リョウはあたしと話をしても、もう楽しいと思わないのかもしれない。たぶんランドや、他の大人の男の人たちといる方がずっと楽しいんだ。
 13歳になって、祈りの巫女の称号を継いだら、あたしも大人になる。大人になったらリョウはあたしと話してくれるのかな。それとも、もっと遠い存在になってしまうのかもしれない。巫女は、この村では特別な存在だから。
 マイラの家に近づいて、あたしは向こうの森をできるだけ見ないようにしながら、扉をくぐった。マイラはベイクと夫婦で、子供はいない。今日もいつもの少し悲しそうな表情であたしを見た。
「ユーナ、待ってたのよ。さあ、早く着てみてちょうだい。良さそうならすぐに仕上げをしちゃうからね」
 そう言ってマイラが持ってきてくれたのは、純白の布に薄いピンク色の飾り布を縫い付けてあって、質素すぎもせず派手すぎもしないきれいな衣装だった。祈りの巫女の色はピンクで、これからあたしは様々な祭事の時には必ずピンクの飾りをつけることになる。衣装を着て、髪に飾りをつけると、マイラはちょっと離れたところからあたしを上から下まで見つめた。