祈りの巫女1
 生まれてから最初の記憶は6歳の時。その時あたしはベッドの上にいて、守りの長老に両手を預けていた。
「……考えずともよい。時至ればそなたは全てを理解することができよう。心穏やかに目を開き、映る全てのものを受け入れるのだ。……ユーナ、そなたの命があることを神に感謝しよう」
 長老の言葉も、周りにいたたくさんの人たちの言葉も、あたしには理解できなかった。だけど、涙を流してあたしを抱き締める母さまの腕が、すごく暖かかったのを覚えてる。父さまが少し悲しそうにあたしを見ていたのを覚えてる。
 その時よりも前のことは思い出せない。父さまも母さまも守りの長老も、誰もあたしに教えてくれない。リョウも教えてくれない。いつもあたしを悲しそうに見つめていただけだった。
 考えないでいよう。そう思って毎日を過ごした。
 思い出せないまま、あたしは12歳になっていた。