あとがき・3
 さて、あとがき第3回(笑)です。

 巳神信市が読んだ野草薫の小説は、厳密に言えば私の小説としては存在していません。
 私は彼女ほど小説が上手ではないので、私の実力では彼女の小説を実在させることができないんですね。
 という訳で、私が書いた小説は、巳神信市が書き直した方の小説、ということになります。

 小説を書いていると、タイプがどんどん進む時もありますし、逆にまったく指が動かない時もあります。
 たまにすごく昔に書いた小説を読み返して、「これって、ほんとに自分が書いたの?」と驚くことがあるんですよね。
 確かにその小説を書いた記憶はあるのですが、今の自分では思ってもみないすばらしい表現を使っているんです。
(あくまで私の視点ですので、他の人が見ればたいしたことはないでしょうが;)
 まるで、自分ではない誰かが、自分に成り代わって書いているような気がすることがあるんですね。
 小説の中の私「黒澤弥生」は、巳神信市の下位世界に存在する、小説を書くためのキャラクターです。
 実際のところは私の下位世界に巳神信市が存在しているのですけど、彼自身は自分の神が黒澤弥生であることは知らないでしょう。
 同じように、私自身も、自分の神が誰なのかは判りません。
 ということは、私だって、誰かの下位世界の人間なのかもしれないですよね。

 小説を書くことは、その世界に生きるキャラクター達の神になることです。
 すごく楽しくてエキサイティングなのですけど、キャラクターが育てば育つほど、野草薫のようにキャラクターに裏切られたりもします。
 まあ、それも楽しいんですけどね。
 このメルマガを読んでいる方で、もしも少しでも興味があるのでしたら、ぜひ小説を書いてみてはいかがでしょうか。