あとがき・5
 さて、あとがき第5回です。
 長くご愛読いただきました「蜘蛛の旋律」も、本日で最後となりました。
 最後に、ぷもに和尚さん、おとわさんの感想を掲載させていただいて、終わりにしたいと思います。


 【ハンドルネーム・ぷもに和尚さん】 ― 一部抜粋 ―

  やっと、「蜘蛛の旋律」終わりましたね。
  よくあれほどの長編を完結させられたと、黒澤さんの体力・アイデア、そしてパトスにただただ感心するばかりです。
  しかも毎日連載という、作者にとってはかなり厳しい試練の中での完結。
  僕にはとても無理なように思われました。

  ・・・ところで、この「蜘蛛の旋律」のことなんですが、、、
  物語の最初の方が、僕にとっては少し分かりづらい部分がありました。
  もう今となっては、どこ、というような具体的な指摘はできないのですが、なんか理解しづらかった印象を受けたのを覚えています。
  それはもしかしたら、僕の理解力が足りなかったのかもしれませんが、なんか物語の筋道があやふやといおうか、なんといおうか、、、、
  (やっぱり自身でもおっしゃるように、行き当たりばったりの性なのでしょうか??)
  (すいません)m(__)m
  でも、本当にエピローグの部分ではだいぶ物語のストーリーが頭の中でうまく繋ぎ合ってくれて、この物語の素晴らしさや面白さを改めて味わうことが出来ました。
  ちょっと理解するのに遅すぎたのが、残念なんですが、その分、しっかりと物語の展開は頭の中にインプットされたハズです。
  特に、いいなぁ〜と素直に感心してしまったのは、色々な小説に登場する人物達や作者自身まで、一つの小説に引き込んでくるという、この夢の共演のような、「蜘蛛の旋律」にはふさわしい舞台が、土台があったことではないでしょうか?
  おそらく、作者にとっては、一つの小説に他の小説から引っ張ってきた、登場人物を登場させるというのは、夢のような仕事だと思いました。
  (それは僕だけでしょうか?)
  それに、黒澤さんの好きらしい人死にも多くでてきたことだし・・・(^^;)ゞ
  とにかく、なんか最後まで読み終わってから、あとからじわぁ〜っと胸に響いてくるような、そんな感じでした。

  これからも素敵な小説を期待しています。
  では、黒澤さんのこれからのご発展を祈りつつ。


 ぷもに和尚さんも小説をお書きになる方なので、作者があちこちの小説の登場人物を一堂に集める物語をどれだけ楽しんでいたのか、見抜いていらっしゃいます。
 「蜘蛛の旋律」は、小説を書くことを心の底から楽しんでいる、小説書きの物語でもあります。
 読んでくださった方が、「空想することの楽しさ」に共感していただけたのでしたら幸いです。


 【ハンドルネーム・おとわさん】 ― 全文 ―

  【石獣庭園】のおとわです。
  毎日連載小説「蜘蛛の旋律」完結おめでとうございます。お疲れさまでした。
  最後までおつき合いすることができて、私も嬉しく思います。

  オープニングで叔父さんからの問いかけに信市が答えを出した形で終わったこの作品は、まるでその答えを導き出す旅に出ているような感じでした。
  信市が答えを見つけることができたという点だけでも、結末としては納得できるものでしたが、キャラクターたちそれぞれが新たな世界の神を見出すための旅をしていたのだな、と思うとそれぞれの旅路が二重写し三重写しに見えてきて少々切なさも感じます。

  と同時に、失う神への復讐という言葉を信市は使いましたが、私にはキャラクターたちが薫へ向けた愛情のための心中劇とも取れました。
  彼らは確かに自らの死を恐れていたのでしょうけど、同じくらいに薫という神を愛するがために一緒に死を迎えることに抵抗はなかったのではないかと思えるのです。共に死を迎えることによって神と同質のものになろうとするかのような彼らの行動が、すべてを読み終えてみると胸に痛みます。

  野草薫の生き方はキャラクターそれぞれに反映されていますよね。
  薫が自らの存在を信市に刻むために古本屋へと案内し、そこで爆発事故に巻き込まれたように、キャラクターたちもそれぞれの存在を印象づけるために、信市を、時には罵倒し、時には諭し、時には恋してみせる。
  それらは結局最後に信市を自分たちの新たな神に仕立て上げるためのものだったわけですが、彼らの行動にダブって薫の心情が透けて見えるようです。
  信市を罵倒したのも、諭したのも、恋したのもすべて薫という人格に反映されていると考えたとき、この物語は非常に繊細で、大胆な恋物語にも見えてきます。

  主人公の答え探しの旅と彼を振り向かせようとする少女の恋との二軸が見事に絡み合ったストーリーだったと思います。
  残念ながら薫は亡くなってしまいましたが、彼女からのメッセージを抱いた信市がまた新たな世界を構築していくことでしょう。
  信市が作り出していくキャラクターは、薫が作り出したキャラクターとまったく同じキャラクターであるわけではありませんが、信市はその結果に納得しているでしょうし、薫もまた小説を書くというその行為を通じて永遠に信市と繋がっているわけですから、彼女もまた納得しているのではないかと感じます。
  むしろ逃れられないほどの呪縛を与えたという点で薫のほうに軍配があがるのではないでしょうか。

  改めて読み返してみると、淡々とした語り口でありましたけど、繊細さを随所に感じる作品でした。
  連載初期の一時期メルマガ購読の中止をされた方が何人か出た、と黒澤さんがコメントに書いていらっしゃいましたけど、今なら「どうだ! 途中で解約して損しただろ!」と言いたいくらいです。
  夢の混沌と現実の混沌がいい具合に混じり合ったストーリーでしたよ。
  今後は少々お休みの期間をおかれるそうですが、また紙面で黒澤さんの作品が読める日を楽しみにしております。

  改めて、面白い作品を配信してくださってありがとうございました。
  またWebでお逢いしましょうね。(^_^)/~~


 巳神信市は、小説の中で1つの答えを提示しました。
 その答えは現時点の彼の中では、ほぼ絶対的なものなのだと思います。
 でも、その答えにしても、たかが10年間で彼が辿り着いた答えの1つにしか過ぎません。
 もしかしたら、5年後10年後には、まったく違う答えを導き出しているのかもしれないんです。

 この小説に、絶対的な答えというのは存在しません。
 おとわさんが巳神信市とは違う答えを導き出したように、皆さんもぜひそれぞれの答えを探してみてください。
 そうすることで、この「蜘蛛の旋律」は、また新たな側面を見せてくれることでしょう。

 ぷもに和尚さん、おとわさん、ご感想及び掲載を快く承知してくださいまして、本当にありがとうございました。