永遠の一瞬・56
 オレは着替えをして、今日使う衣装を用意したあと、タケシと一緒に荷物の整理をした。タケシの車は本部に置いてきてるから、荷物は今日のうちにオレの車に運び込んでおく。それだけの作業を終えると、時刻は6時を回った。
「ちょっと早いけど出ようか」
「ああ、そうだな。シーラを呼んでくる」
 夕食は途中で時間を見計らって摂ることにしてたから、タケシは何も言わずにシーラを呼びに部屋を出て行った。今日は土曜日だから、道路の状況も普段とは違うだろう。でもまあ、決行の時刻はあくまで目安で、多少前後したとしても構わないんだけどね。あんまり遅れるとセキュリティ会社に疑われるけど。
 タケシに連れられて部屋に入ってきたシーラを見て、オレは一瞬息をのんだ。
「……何度見ても馴れないな。シーラ、君はほんとに、世界一の絶世の美女だ」
 今日のシーラはばっちり化粧をして、着ているものも割に身体の線がはっきり出たいいセンスのパンツ姿だったから、いつものシーラとはまるっきり別人みたいだった。タケシの方も割におしゃれに決めてるから、2人並ぶとほとんど美女と野獣だ。……って、別にタケシをバカにしてる訳じゃないぜ。タケシくらい個性が強くなかったら、今のシーラと並んだらぜったい霞んじまうだろう。
「そーお? でもいまいち髪が決まってなくない?」
「完璧じゃない部分がひとつもなかったらかえって変だよ。 ―― うん、これなら大丈夫。目立ちまくること間違いなし」
「よかった」
 かくいうオレはそれほど個性的でない、平凡な平服を着てたりする。だからシーラとタケシの傍にいると霞みまくってる訳だ。この服装は現場到着までのもので、だからシーラの美女振りを見られるのもそれまで。もったいないといえばそうなんだよね。
 シーラの荷物を持って駐車場まで行って、車に荷物を運び込んだあと、オレたちは例の盗聴ワンボックスに乗り込んだ。運転席はタケシで、助手席がシーラ。オレは濃い色のスモークのかかった後部座席でのんびりさせてもらう。盗聴器があると思うとそれほど神経は休まらないだろうけど。
「少し眠れよ」
 タケシが振り返って言ったから、オレはわざわざ助手席に乗り出して、シーラの耳元で言った。
「そこの美人のお姉さん、オレがゆっくり眠れるように、添い寝でもしてくれませんか?」
 真っ赤になったシーラに思いっきり殴られて、オレは昏倒した。