永遠の一瞬・51
 作戦会議の後、オレにとっての朝食、2人にとっての遅めの昼食を、ホテルのレストランで摂ることにして部屋を出た。ここもシーラが選んだホテルなだけあって、全般的に食事がおいしい。その他の娯楽施設なんかはあんまりないんだけどね。シーラはそれが物足りなかったらしいな。次の潜入場所にシーラが選んだのは、そういう施設がわりに充実したホテルばっかりだった。
 4人がけの丸テーブルに腰掛けて、てきとうに注文を済ませて顔を上げると、タケシがオレの顔を見てニヤニヤしていた。
「なによ」
「いや……シーラの張り手もかなりの威力だな」
 どうやらオレの顔はそうとう腫れてるらしいな。今日は誰に顔を見られるわけでもないから、多少変形してたとしても構わないんだけど。
「そのうち1度体験してみろよ、半端じゃなく痛いんだからな」
「オレはお前ほど女心に冷淡じゃねえよ」
「なんだよ2人とも。あたしだってサブロウがあんな事しなかったら怒ったりしないんだからね」
 あんなこと、って、オレは実質何もやってないんだけどね。
 だけどシーラにとっては何もしなかったことの方が気に入らないみたいだ。ったく、面倒っていうか、手間がかかるっていうか。
 女として扱ってもらいたいならもう少し大人になればいいじゃないよ。……とはいっても、シーラが大人になる方が、オレは困ったりするんだけどね。
 シーラにはいつまでも子供のままでいて欲しいって、オレは思ってる。大人になんかならないで欲しい。恋も何も知らないまま、いつまでもオレの傍にいて欲しい。その方がどれだけ楽だっただろう。
「そういや、シーラはおねしょがなかなか直らなかったよな。何歳まで一緒に謝りに行ってたっけ」
 オレが言うと、シーラは真っ赤な顔をして無言でオレを殴った。さすがに顔面平手は目立つから、拳固で頭と肩を数発ずつ。
 フォローのつもりか、タケシが言った。
「シーラ、お前は知らねえだろうけどな、サブロウは最近1回やってんだ。だから最高年齢はサブロウの方が上だぜ。安心しな」
 おいおいタケシ! あんまりオレのメンツ潰すようなこと、気軽にシーラに話すなよ。確かこのことはシーラに内緒の約束だったはずだぜ。
「そうなの? だったらぜんぜんあたしのこと言えないじゃない。ずるいよ」
「そのくらいサブロウが抱えてる精神的重圧はすごいんだ。……大人に扱ってもらいてえんなら少しは察してやれ。お前が見てるサブロウがすべてじゃねえんだ」
 そのタケシのフォローにはどうコメントしていいか判らなくて、オレは何も言うことができなかった。