永遠の一瞬・50
 簡単に顔だけ洗って、オレは2人の向かいのソファに腰掛けた。テーブルには川田ビルの見取り図と、付近の詳細な地図、地域の道路地図なんかが広げてある。全員そろった手順の確認は最初で最後になる。これをおろそかにすると、現場に出てから苦労する羽目になる訳だ。
 実は今いるホテルから川田ビルまで、直線距離でも100キロはあるんだ。車で順調に進んだとしても2時間はかかる距離で、土曜の夜だから更にかかる可能性もある。深夜11時に忍び込もうと思ったら、最低でも夜の8時には出ないとならない。実際はもう少し早くなるだろうな。車の運転は、最初はタケシが担当して、近くなってきたらシーラに代わる。
「シーラ、国道からの道をもう1度説明して」
「判った。……国道から伊那の交差点を右折してまっすぐ。踏み切り近くはたぶん混むから、ここ、六道の交差点で左に折れて、しばらく行ったここのT字路で一方通行を右折するの。3つ目を右、道なりに走って、カーブのすぐあとの路地を入ると川田ビルの裏に出るから、ここでタケシを下ろす。そのあと走り過ぎてすぐの十字路を左に曲がって、すぐ左。川田ビルの玄関前までくるからサブロウを下ろす。そのあとあたしは先のチケットパーキングで連絡待ちの予定」
「場所が空いてなかったら?」
「その時は仕方ないからしばらく走ってるよ。……でも、たぶん大丈夫だと思う。前の時もガラガラだったし」
「前に使ったところは避けたいな。できたら反対側で探してくれる?」
「判った」
 作戦に使う車は昨日本部で調達してきたワンボックスだ。車種も色も1番出回ってる型で、できるだけ目立たないようになってる。だけど敵が本部なら一発だからな。マークされる確率の方がはるかに高いだろう。
「それじゃとりあえず現場到着まではいいね。次はタケシ、説明して ―― 」
 ま、こんな感じで、オレたちはほぼ2時間をかけて、作戦を確認していった。