永遠の一瞬・47
 もしかしたらオレが帰るのを待ってたのかもしれない。部屋のドアを開けると、タケシがタバコの火を消して立ち上がるのが見えた。
「ただいまー、タケシ。シーラと寝た?」
「……寝る訳ねえだろ。バカなこと言ってんじゃねえ」
「そーお? だったらオレとSEXしよ」
 そう言ってオレがタケシの首に抱きつくと、タケシは少しあわてたようにオレを引き離した。
「お前、また酔ってるな。どのくらい飲んだんだ」
「ワイン2本」
「飲み過ぎだ。自分が未成年だって自覚はねえのか」
「タケシ知ってる? オレは来月ハタチになるんだぜ。1日3箱吸ってるお前に言われたくないよーだ」
 アルコールも飲み慣れてないからまだ判らなかったんだけど、どうやらオレはあんまり強くないのかもしれないな。長いフレーズになるとロレツが回らなくなってくる。身体はふらふらするし、タケシにしがみついてでもいないと倒れそうな感じだ。
「ああ、来月になったらいくらでも言わせてやる。とにかく少し寝ろ。話は明日聞いてやる」
 タケシは手早くオレのスーツとシャツを脱がせて下着にすると、ベッドに押し倒した。その上から布団をかけて、ベッドの縁に腰掛ける。目を閉じると、オレの額に手のひらを押し当てた。タケシの手は大きくて肉厚で体温が高いのか少し熱い。
「お前の手、熱くて気持ちがいいのな」
「疲れてるんだろ。ゆっくり寝ろ」
「そうする。……タケシ、オレ、タケシのことが好きだ」
「ああ。……判ってる」
「タケシなら、安心なんだ、オレは……」
 このときオレは、自分がいったい何を言ってるのか、いったい何を言おうとしているのか、まったく判らずにいた。
 だけど、寝ないでオレを待っていてくれて、オレが眠りにつくまでずっと額に手を当てていてくれたタケシの優しさだけは、目がさめてからも忘れなかった。