永遠の一瞬・42
 部屋ではタケシが既に着替えを済ませていて、テーブルに資料を広げて情報をメモしていた。立て続けに何本か吸ったらしく、視界が白く曇ってて、タケシが煙を吐く勢いに空気清浄機が追いついてない。何か嫌なことでもあったのかもな。タケシはそういうのをめったに表に見せないから、実際タケシがどういう調査をして情報を仕入れてくるのか、オレにもよく判らないようなところがある。
「それ、明日シーラと一緒にもらってきて」
 タケシがたまたまリストを手にしていたから、オレはそう声をかけた。タケシはまじまじと見つめ、少しおかしな顔をする。言いたい事は判る。オレが作ったリストは、機材があまりにも多いし、それをすべて使って侵入するような経路は非効率極まりないだろうから。
「お前にはこれだけの数が必要なのか?」
「まあ、そういうことかな」
「……そんなに本部は信用できねえか、サブロウ」
 ああ、そうか。タケシが本部のスパイで、オレの行動を監視してる可能性だって、ゼロじゃないんだ。そんなあたりまえのことに初めて気付いた。だからってタケシを疑ったりしないけどね。タケシを信頼できなくなるくらいなら、ひとおもいに殺された方がマシだ。
「答えに困ることを平然とよく言うね、お前も。だけどまあ、信頼度が100パーセントかって言われたら違うとしか答えられないし、だからって0パーセントでもないよ。タケシだってそうだろ?」
「少なくともお前は、侵入経路を悟られたくねえってくらいには本部を疑ってるってことか」
「もう1枚のシーラが作った方のリストも見といてくれる? たぶん実際に使うのはこっちの機材だけになると思うから」
 オレが言うと、タケシはそれ以上、この件については触れなかった。