永遠の一瞬・39
 1度部屋に戻ったら外に出るのもなんとなくおっくうになって、結局夕食はホテルのレストランで摂ることにして、オレとシーラは部屋を出た。ホテル内ではタケシが一緒にいることも多いから、2人っきりで食事をするときも、恋人同士のような雰囲気は出さない。しいて言えば暇な大学生のお気軽旅行ってとこか。男2人に女1人だと、そのへんはちょっと怪しいかもしれないな。
 魚メインのコース料理を頼んで、向かい合わせに座って、ワインで乾杯。シーラは外見は割に大人っぽいから、未成年に見られる心配だけはないのだ。
「このワイン、あんまり甘くない」
「そう?」
「あれがおいしかったな。北海道で飲んだいちごのワイン」
「ああいうのはワインて言わないだろ。ほとんどジュースだったじゃないの」
「また行けるといいな、北海道」
 オレたちの仕事で北海道に行くなんて、一生に1度あるかないかだと思うけどね。よっぽど運がよくなきゃ無理だって。
「北海道は無理だけど、あのワインがもう1度飲みたいんだったら取り寄せてあげるよ。確か製造元はメモしてあると思ったから」
「ほんと?」
「代金引換でホテルに配達してもらえたらね」
「なんか、サブロウがあたしに優しいと気持ち悪い。でも嬉しい。ありがとう」
 別に、いいんだけどね、優しい男だと思われたい訳じゃないから。
 シーラの胸元に安っぽく光るペンダントを眺めて、自分がシーラに与えることのできる優しさの値段を推し量ってみる。