永遠の一瞬・37
 しばらくの沈黙のあと、シーラは言った。
「……あたしに動揺して欲しくなかった?」
 理由は、シーラの方がつけてくれた。確かにそれもある。他の理由の方が大きかったけど。
「この仕事は進行中の作戦が完了してから手をつければいいことになってる。だったら今の仕事が終わってから話しても問題ないだろ」
「あたしの方がサブロウに言いたいよ。……もっとあたしを信用して」
「判った。君は確かにオレたちのチームメイトだ」
 ファイルを金庫に納めながら、オレは神妙に言う。これからは少し過保護は改めよう。そして、シーラに対して2度と油断しない。
「中は? 見せてくれないの?」
「それは作戦上の必然でね。今回の作戦を遂行するに当たって、君にはこのファイルに影響されてもらいたくないんだ。それは信用するとかしないとかとは別問題なの」
「……でも、タケシは知ってるんでしょ?」
「もしも本部に出向いたのがオレだったら、たぶんタケシにも見せなかった。だから正直、タケシが影響されるのはオレも怖いんだ」
 それは本当だったから、シーラも納得しただろう。少し笑顔を見せる。タケシと同列に扱われたことが嬉しかったのかもしれない。
「あ、こんなこと、タケシには言うなよ」
 駄目押しに、秘密めいた仕草で指を立てて笑って見せたから、シーラはすっかり機嫌を直していた。これでしばらくはシーラの癇癪に悩まされることはないだろう。
 ほんと、シーラを扱うのはけっこうスリリングで、だけどうまくいったときの快感は癖になりそうな気がした。