永遠の一瞬・38
 夕食まではまだ時間があったから、オレは今回の仕事のファイルを広げて、シーラが立てた作戦を確認した。オレとタケシの侵入経路から、実際に仕事をして脱出する際の脱出経路。ひとつひとつ詳細にシーラに説明させて、確認して、頭の中で繰り返し辿っていった。シーラが立てた作戦は、オレが機材のリストを見て想像したものとほとんど同じだった。ただ、微妙に違っている部分もあったから、そのたびにオレはいちいちシーラに確認して、記憶していったのだ。
 その中で、大きく変更を加えなければならないのが逃走経路だ。シーラが想定した経路はいくつかあって、最終的には当日決めなければならないのだけど、あのファイルを受け取ったことでオレの作戦はかなりの変更を余儀なくされてしまったのだ。
「なんだかサブロウはあんまりピンとこないみたいだね」
 シーラが言う通り、オレは自分を守る逃走経路をまだ図りかねていた。確かにあのファイルにはオレを惑わせるだけの効果はあったらしい。
「予約したのはどのホテル?」
「サングロリアと、ウォーターハットと、菊姫荘、かな」
「お前、完全に趣味で選んだな」
「悪い? 潜入先なんてどこもたいして変わらないじゃん。それだったら楽しい方がいいよ」
「ああ、君は悪くないよ。君の言う通りだ。潜入先のホテルなんてどこもたいして違わないし、楽しい方がそりゃいいに決まってるよ」
「サブロウまたあたしのことバカにしてるー」
 実際おもしろい選び方だった。なんたってサングロリアと菊姫荘じゃ、直線100キロは離れてる。
 だけどどちらにせよオレがピンとくるようなホテルじゃなかったのは確かだ。
「あと2つ、趣味で選んで、予約は当日入れてくれる? 土曜日だからちょっと大変かもしれないけど」
「……うん、判った」
 シーラはまた少し不審に思ったようだったけれど、オレがあのファイルの内容を知っていることで、なんとなく納得したみたいだった。