永遠の一瞬・35
「タケシは出かけてるの?」
「1度帰ってきたみたいだね。オレが帰ってきたときにはもういなかったけど」
「調査に行ってるんでしょ? あたしは行かなくてもいいの?」
「必要があればそう言う。とりあえず今回はオレとタケシで何とかなりそうだ。ホテルは? 予約しといてくれた?」
「いつもの通り3ヶ所予約入れといたよ」
「あと2ヶ所ばかり追加しといて」
「……判った」
 どちらかというと、チームの中でのシーラの役割は、いわゆる後方支援といったところだ。逃走経路を確認したり、機材を調達したり、ホテルの予約を入れたり。だけど別にシーラの能力を低く見てるわけじゃない。シーラの変装能力はオレたちの中ではトップだったし、演技力だって教官の太鼓判が出るくらいだ。
 シーラに調査を担当させれば効率がいいことくらい判ってる。だけどオレはシーラを調査に参加させたくはなかった。1つはシーラが単位を取っていないことがあるけど、理由はもう1つある。シーラの演技力は、完璧な分、著しく精神を消耗させるんだ。
 オレくらい気楽にいろいろできる子ならいろいろさせるのも勉強なんだけどね。まあでも、オレが過保護なのは言うまでもないか。ほんとはシーラには普通の女の子の普通の人生を歩んで欲しいと思う。好きな男の傍で、好きな男の子供を産んで、幸せに過ごして欲しいと思う。
 オレがタバコを1本吸い終えて、灰皿に押し付けると、それを待っていたようにシーラは言った。
「サブロウ……サブロウはどうしてあたしに隠し事ばっかりするの?」
 正面からシーラに見つめられて、オレはほんの一瞬視線を泳がせた。