永遠の一瞬・33
 組織はいつも、オレを狙っている。オレを脅威と感じている。それがなぜなのか、正確なところはオレにも判らない。だけど、組織はオレが幼い頃から何度もオレを狙ってきた。偶然を装ったり、敵対する組織を装ったりしながら。
 オレの何を脅威と感じるのか判らなかったから、オレはいつでも平凡で、成績もそれほどよくない、優秀といわれるスターシップとはかけ離れた存在になろうと努力してきた。絶対タケシよりもいい成績は取らなかった。組織に敵対するような行動も言動もしなかったし、オレが知りえたことも表に出さないように、タケシにもシーラにも何も話さないまま、大人になった。
 だからタケシは何も知らない。オレが狙われていることも、オレが知っているあらゆることも。
 もしもそれを話したら、今度はタケシが狙われてしまうことになるはずだから。
  ―― オレは金庫を開けて、タケシが入れておいた2つ目のファイルを取り出した。
 その仕事の意味は見る前から判っていたけれど、ファイルをひと通り読んではっきり判った。この仕事はオレたちの逃走経路を特定するためのものだ。次の仕事が決まっていて、その仕事が割に急を要する仕事だった場合、逃走後の潜入場所は次の仕事場に近い場所を選ぶのが普通だから。
 今回の川田ビルの仕事から、この計画は決まっていたんだろう。オレは前に川田ビルに侵入したことがある。報告書は本部に上げてあるから、ビル内からの脱出経路もある程度見当がつく。これだけ用意周到に狙われて、もしも気付かなかったとしたら、オレは本部の思惑通り偶然を装って消されていたことだろう。
 だけど、これだけ用意周到に狙われたら、気付かない方だってどうかしているし、これまで生きてこられなかったと思う。