永遠の一瞬・34
 ファイルを再び金庫にしまって、オレはほとんど乾きかけていた服を脱いだ。シーラとのデートを切り上げて帰ってきたのは、濡れた服を着替えてシャワーを浴びるためだ。今ごろシーラもシャワーしてるんだろう。別にシーラの入浴シーンを見たいとは思わないけど、それなりにスタイルもいいし肌のきめも細かいから、シャワーの水滴をはじく若い身体はさぞかし綺麗なんだろうな、とは思う。
 熱めのお湯を簡単に浴びて、髪と身体を拭いて、備え付けのバスローブだけを着けて今度は金庫から今回のファイルを取り出した。その間に挟んであるシーラが作ったリストを広げて、ファイルと照らし合わせながら別の紙に書き写していく。途中、バスローブから部屋着へと着替えたけど、それだけで、オレはほとんど休みなくその作業を続けていった。集中してたせいだろう。ノックの音に気付いたのは、ほとんど蹴飛ばしてるとしか思えない盛大な音に変わってからだった。
 だいたいの作業は終えてたから、オレはすばやくリストとファイルを金庫にしまって、部屋のドアをあけてやった。もしかしたらオレを心配してたのかな。シーラの表情はあせりと不安が見えて、少し泣きそうにも見えた。
「悪い、着替えてた」
「……だったら返事くらいしなよ。ルームサービスのコーヒーに何か入ってたかと思うじゃんか」
「お前が廊下で騒いでる方がよっぽど危険だよ。とにかく入れ」
 シーラを部屋に入れると、オレはひと通り廊下を見回して、扉を閉めた。シーラはソファまで歩いていって、どっかりと腰を落とす。チームのメンバー以外の人間がいるときはもっとエレガントに振舞うこともできるんだけどね。男の中で育ったせいか、シーラは言動も行動もどこか男っぽい雰囲気がある。
 オレもソファに腰掛けて、タケシがテーブルに忘れていったタバコに火をつけた。