永遠の一瞬・32
 牛と羊をたらふく食べて、牧場の牛と戯れ、シーラに記念写真を撮ってやったあと、すっかり機嫌を直したシーラを連れてホテルに戻ってきていた。と、ちょうど出かける間際だったタケシと遭遇する。これからタケシは、昨日のオレと同じように、川田ビル潜入の情報集めに向かうわけだ。
「ただいま、タケシ。本部の報告してる暇ある?」
「ねえけどしねえままでいるには深刻だ。今、金庫に入れといた。本部はオレたちに仕事をよこしたぞ」
 本当なら、作戦進行中に本部が別の仕事を入れてくることはありえない。その本当の深刻さはタケシにも判らないものだ。もしかしたらタケシやシーラを危険にさらしてしまうことになるかもしれない。
「断わってくれなかった訳はないよね。何か言ってた?」
「上からの命令の一点張りだ。作戦開始は今の作戦終了後で構わないって言われたら、オレに断わる口実はなかった」
「判った。……悪かったね、タケシに頼んじゃって」
「かまわねえよ。それより、お前ならもっとうまくできたかもしれねえ」
「オレでも同じだったさ。……念のため、シーラには内緒にしといて」
「判ってる」
 そう言ってタケシは部屋を飛び出していった。もしかしたら時間ギリギリまでオレを待ってたのかもしれないな。やっぱりめんどくさがらないでオレが本部に行くべきだった。
 オレが直接見ていれば、少しは奴らの考えていることが判ったかもしれない。