永遠の一瞬・30
「……泣かないの。せっかくの美人が台無しだろ」
 シーラの頭をぽんぽんと叩くと、泣きかけていたシーラは大粒の涙を流した。
「そんな言い方ずるいよ。……サブロウはあたしのこと、美人だなんてぜんぜん思ってないくせに」
 思ってるよ。シーラより美人なんて、この世の中にいる訳ないとオレは思ってる。ほんとはいるのかもしれないけどね。だけど、今までシーラより美人だと思った女なんて、オレにはいないんだ。
「もっと自信を持ちなさいよ。……高校時代、君に片思いしてた男を、オレは3桁は知ってる。よく告白されたでしょ」
「……うん。でもなんか変な人ばっかりだった。告白できただけで満足です、みたいな」
 そりゃ、そうだろうな。シーラにはタケシが四六時中まとわりついてたから、シーラと付き合うためにタケシと一戦交える気には誰もならなかっただろうさ。
 その頃オレは学校の中ではあまりシーラと仲良くしなかったから、シーラはタケシと付き合ってるんだと思ってた奴はけっこう多かったに違いない。
「そのくらい、君は美人なんだよ。高嶺の花に思われてたんだから」
「そんなの嘘だよ。だって、サブロウはぜんぜんそう思ってない」
「そんなにオレが信じられないなら、タケシにでも聞いてみろって。オレのことは信じられなくても、タケシの言うことなら信じられるんだろ?」
「タケシはサブロウみたく嘘つきじゃないもん」
「だったらためしにタケシと付き合ってみれば? そういうのは別にタブーじゃないし、オレは喜んで君たち2人を応援するよ」
 シーラはまた少し傷ついたようで、目を伏せて、大粒の涙をこぼした。