永遠の一瞬・28
 シーラをかわいいと思う。
 シーラを守りたいと思う。
 シーラには、世界で一番幸せな女の子になって欲しい。
 シーラの幸せを、永遠に守ってあげたい。

 帰り道、シーラを助手席に乗せて山道を下っていると、オレの携帯電話が鳴り響いた。
「取ろうか?」
「いや、いい。車を止めるから」
 ちょうど坂道の車止めスペースがあったから、オレはその隙間に車を停めて、電話を取った。相手は昨日の女性だ。どうやら金庫の中の番号を見ることができたらしい。
「はい……はい、判りました。どうもありがとう」
 シーラが見守る前で、オレは携帯電話にキスをする。
「……愛しています」
 電話にそう言った次の瞬間、シーラはドアを開けて車から飛び出して行こうとしたのだ。
「やめてよ! 放して!」
 すんでのところで腕を捕まえたけど、シーラは激しく腕を返してオレを引き離そうとする。こんなところで後先考えないで車を飛び出したら危険なんだ。このあたりは走り屋がうようよしてて、通り過ぎる車やバイクはみんなスピードを出してるんだから。
「子供扱いされたくなかったら子供みたいなことはしないの! 追いかけてくオレのことも考えなさい!」
「追いかけてなんか来なくていいもん! どうせサブロウはあたしのことなんかどうだっていいんだから」
「そんなわけないだろ!」
「だったらあたしと一緒にいるときに他の女にそんなこと言うなよ!」
 そう言われてもな。仕方ないだろ、あのキスと言葉が催眠術を解くキーワードなんだから。
 いっそ抱きしめて強姦してやろうか。そう、思わなくもなかったけれど、実際そういう訳にもいかないから、オレは強引にシーラを引き戻して、助手席のドアを閉めた。