永遠の一瞬・29
 反対側の座席のドアを閉めるために、オレはかなり身体を乗り出さなければならなかった。だから、ドアを閉めたあとのオレの体勢は、ほとんどシーラにのしかかっているような格好になる。そんな体勢で腕を拘束して睨みつけているからだろう。シーラは身体を硬直させて、まん丸に目を見開いていた。
「シーラ、オレが交際してる女性について、君にとやかく言う資格はないだろ」
 オレとシーラは、今は恋人同士のように見せているけれど、実際は単なるチームメイトだ。オレが誰と付き合おうとシーラに何か言う資格はないし、オレの方もそうだ。シーラは反論の言葉を捜してる。だけど、けっきょく何も見つからないらしくて、硬直したまま沈黙していた。
「オレのプライベートに口を出すな。それだけは、君にもタケシにも許さない。……判ったな」
「……その人のこと、好きなの?」
「君には関係ない。オレはずっとそう言ってるだろ」
「サブロウは誰が好きなの? あたしよりその人の方が好きなの?」
「……本気で怒るぞシーラ。これ以上踏み込んだらオレは君とはチームを組めない」
 正直、オレは怖かった。シーラがその言葉を口にするのが。
 たぶん、シーラがそれを口にしたとき、オレは彼女の傍にいられなくなるから。
 微妙なバランスが、オレとシーラとタケシの間には存在している。
 そんなオレの、苦しまぎれとしか言いようのない脅し文句は、確かにシーラの心を動かしたようだった。
「……ごめんなさい。もう言わない。……チーム解消したくない」
 今にも泣き出しそうなシーラの表情は、オレには苦しかった。