永遠の一瞬・27
 他の人間に向けるのと同じ優しさを、シーラにも向けるべきなのかもしれない。シーラは区別できないのだから。オレが他の女の子に向ける優しさが本物か偽物かなんて。
 どこかにあるんだろうな。シーラに対する誠意とか、そういうものが。
 まあ、どちらかって言えばシーラをいじめたい欲求の方が遥かに大きいと思うけど。
「優しくして欲しい訳?」
「……そんなこと言ってないもん」
「強情だな。優しくして欲しいなら欲しいって素直に言えばじゃん」
「サブロウなんかどうだっていいもん! あたしはすっごく優しい彼氏を見つけるんだから!」
「ああ、そりゃそうだろうよ。君の彼氏になろうとするなら、そうとう優しい男でなければ不可能だ」
「あたし帰る!」
 そう言ってシーラは勢いよく歩き始めたからとたんに足を滑らせた。危ういところで抱きとめたけど、オレが捕まえそこなってたら間違いなく岩に頭をぶつけていたところだ。
「滑りやすいんだからゆっくり歩きなさいよ」
「……ありがと」
「いいえ、どういたしまして、お姫様」
「そんなに子供扱いするなよ」
 いつもなら拳固の1つでもくれるシーラが、今回に限っては振り向きもしない。
 それはなんとなく居心地が悪くて、足場がしっかりするまでの間、オレはからかいの1つも口にできなかった。