永遠の一瞬・23
「 ―― あの、すみません」
 声をかけられて振り返ると、観光客風の女の子が2人、カメラを手にしてオレを見上げていた。
「はい?」
「写真、撮ってもらえませんか?」
「ああ、いいですよ。滝をバックにする?」
「はい! あ、これ、シャッター押すだけなんで」
 そう、使い方を説明しながら彼女が手渡してくれたのは使い捨てカメラで、オレは心の中で苦笑しながら少し後ろに下がった。柵から乗り出していたシーラも気付いて、写真の邪魔にならないようにオレの傍に寄ってくる。お決まりのかけ声をかけて写真撮影。2枚ほどシャッターを押して、笑顔で近づいてきた彼女たちにカメラを返した。
「ありがとうございました。……あの、よかったらあたし、シャッター押しますけど」
 どうやらオレたちをカップルと見て気を遣ってくれてるらしいな。まあ、2人で外に出るときは傍からそう見られるようにしているつもりだから、誤解しても彼女たちのせいじゃない。
「そう? ありがとう。でもオレたちカメラ持ってこなかったんだ」
「カメラだったらあそこで売ってますよ。……もし買ってくるんでしたら、あたしたち、待ってますけど」
 ……記念写真か。そういえばあんまり撮ったことなかったよな。
「どうする? 写真撮りたい?」
 オレはシーラを振り返った。シーラは何も言わないでオレをじっと見上げているけれど、目が爛々と輝いていて、訴えているのは明らかだった。もしかしたら今までも、シーラが写真を撮りたいと思った場面はあったのかもしれないな。オレはシーラの頭を1回なでると、彼女たちに笑顔で振り返った。
「ほんとに? 待っててもらってもいいの?」
「いいですよぉ。どうせ暇な女2人旅だしー」
「悪いね。すぐ戻ってくるから、ちょっとだけ待ってて」
 極上の笑顔を振り撒いて、オレは彼女たちが教えてくれたみやげ物屋へと走っていった。