永遠の一瞬・22
 再びシーラを車に乗せて、オレはくねくねした山道の舗装道路を登っていった。さすが付近唯一の観光名所だけあって、車通りも少なくない。すれ違う車のナンバーも半分は他県だ。まあ、平日でもあるし、駐車場に苦労するほどではないだろう。
「ねえ、どこに向かってるの?」
 さっきから何度も看板が出てるはずなんだけどな。仕事中ならシーラもそういうものを見逃したりはしないけど、デートだと思うとあんまり気を回さないらしい。
「この先に滝があるんだよ。小さめだけど垂直に落ちてるからけっこう豪快」
「そうなんだ。滝って見るの初めてかも」
「小学校の遠足で見たでしょ? 白糸の滝とか」
「そうだっけ」
 ……別に、いいんだけどね。小学校の遠足を忘れたって、命に関わるわけじゃないし。
 オレとシーラとは正確には1歳半違いで、学年計算でも1年違うんだけど、オレの学年が1年遅れてるから遠足も修学旅行も全部一緒に行ってるんだ。
 駐車場に車を停めて、滝の全体像を見ることのできる橋の上まで歩いていった。今のところ観光客もまばらだから、のんびりゆっくり見られそうだ。
 それほど大きな滝ではないけれど、間近で落下してゆく水の塊はかなりの迫力だ。周囲の岩に反射するごうごうという音もいい。オレは滝が好きだ。滝には戦いのイメージがあって、そのイメージはタケシに重なるから。
「けっこう高いよ、サブロウ。ちょっと怖いみたい」
「乗り出して落ちるなよ」
「下にも行ってみたいな。濡れそうだけど」
 シーラも気に入ったみたいで、振り返った笑顔はオレには眩しかった。