永遠の一瞬・20
 オレはベッドから起き上がって、車のキーを取った。
「腹減らない? 朝メシ食いがてらドライブでもしよっか」
 気分を変えるようにオレが微笑むと、シーラの表情が目に見えて明るくなった。
「する! あ、でもあたしお化粧してない!」
「大丈夫だよ。君は今のままで十分美人だから」
「どうしよ。うーん、でも、サブロウの気が変わっちゃったらやだからいいや。バッグだけ持ってくる。待ってて!」
 そうしてシーラが部屋を飛び出していったから、オレはカードキーを持って部屋を出て、そのままエレベーターホールに向かった。エレベーターを待っている間にシーラが追いついてくる。外に出ることが嬉しいのか、ちょっと息を弾ませながらも笑顔だった。
「なにが食べたい?」
「えーとね、ホテルじゃ絶対食べられないものがいいな。……マクドナルドの朝食セット!」
「君は安上がりでいいね」
「なんだよ。どうせあたしはサブロウが付き合ってる女の子みたいにお上品じゃないもん」
「たまにはいいよ。毛色が変わってて」
「……今日は他の娘の話なんかするなよ」
 始めたのはシーラの方だと思うけどね。でもまあ、そのへんの心理も判らない訳じゃない。オレもシーラに対してはそうとう意地悪だ。
「判ったよ。今日は君の行きたいところに連れてってあげるから。希望があるなら何なりとお言い付けくださいませ、お姫様」
 頭をぽんぽんと叩いて、少し子供扱いしたことにまたヘソを曲げるかとも思ったけれど、それは今はたいして気にならないようで、シーラは機嫌を直していた。