永遠の一瞬・16
 昨日放り出したはずのスーツはベッドの上から消えていた。オレがそのまま眠っちまったから、おそらくタケシが片付けてくれたのだろう。シーラもタケシもけっこうまめなタチだ。リーダーがずぼらなチームのメンバーは自然にそうなるらしいな。
 ようやく頭がはっきりしてきたから、オレはシャワーを浴びようと立ち上がった。
「さっき本部から呼出し命令があった。出られるか?」
 作戦進行中だろうがなんだろうが、本部は構わず命令を出してくる。別に珍しいことじゃなかった。だけど、いちいち面倒なのも確かだ。
「タケシに頼んでもいい?」
「そう言うだろうと思って返事はしておいた。オレの担当は午後からだったからな。本部の方を午前中に片付けておく」
「頼りになるな。助かるよ」
「シーラが昨日機材のリストアップをやってたから、問題がなければついでに取ってきておく。……明日のお前の担当、少しは回してくれても構わないぜ」
「それはいいよ。シーラを見張っててもらった方が遥かに助かるし」
「まあ、そういうことなら今日はサブロウがシーラ担当だ。あんまりあいつを刺激するなよ」
 シーラ担当、か。タケシも言うことがきついこと。
「……外で動き回ってる方がよっぽど気が楽だね」
 タケシと少しの会話を交わしたあと、オレはシャワーを浴びた。鏡を見ながら昨日のキスマークを軽くマッサージ。腰にバスタオルを巻いて部屋をうろうろしていると、タイミングの悪いところでシーラがやってきた。オレの身体を上から下までジロジロと見回したあと、ソファのタケシの隣に座って、タケシの腕にしがみつくように顔をうずめた。
「タケシ、なんでサブロウはあたしに意地悪ばっかりするのかな」
 今回に関してだけ言うならば、それはまったくの濡れ衣だとオレは思う。