永遠の一瞬・13
 部屋に戻ると、タケシが憮然とした表情でオレを睨みつけていた。テーブルには2つ目の灰皿が既に吸殻の山を形成しつつある。その吸殻の山と同じだけ、オレに言いたいことがあるのだろう。
「あーあ、つっかれたぁ。シーラに伝言頼んだの、聞いてくれた?」
 灰皿の上に吸いかけがあるというのに、タケシは新しいタバコに火をつけた。どうやら気付いてないらしい。オレはスーツをベッドの上に放り投げて、灰皿の上にあったタケシの吸いかけを取り上げて、深く吸い込んでみた。けっこうきつい。
「タケシと間接キス、しちまった」
 そのままベッドに寝転がると、タケシは心を決めたのか、そう言った。
「サブロウ、シーラと寝てやれ」
「やだね」
 シーラを好きなのは、オレじゃなくてタケシだ。なんでタケシに頼まれてオレがシーラと寝なきゃならない。
「タケシと寝た方が遥かにマシ」
「オレはそういう趣味はねえ」
「オレだって。女の方がいいさ」
「……シーラだって女だろう」
「シーラは女じゃない」
 オレがいない間にシーラと何があったのかは知らないけど、タケシはずいぶん思いつめてるみたいだった。