永遠の一瞬・10
 あまり時間もなかったから、オレはすぐにタケシの車を発進させた。すると、背後でエンジンをかける音が聞こえる。まさか自分の車のエンジン音を聞き間違えはしなかった。シーラの奴、運転席に移動して、オレの車を動かしたのだ。
「……誰か、助けてくれよ」
 ひとりごちて、駐車場を抜け、一般道に入る。少し遅れてシーラも出てきていた。まさかこんなところでカーチェイスをする羽目になるとは。いったい何が気に入らないんだあいつは。
 オレはスピードを上げて、さして多くもない車の間をすり抜けた。シーラの奴も、かなり危なっかしい運転でそれでもピッタリとついてくる。オレはなんとかシーラを巻こうと更にスピードを上げて、シーラも必死でついてきて、2台の車の攻防はしばらくの間続いた。だけど、このまま続けてたら間違いなく事故る。オレじゃなくてシーラの方が。
 あきらめて、オレはスピードを落とし、ウィンカーを出して路肩に停車した。シーラもついてきて、オレの前方に車を止めた。
 オレは車を降りて運転席のドアを開け、シーラを引きずり出した。
「どうしてオレの邪魔をするわけ?」
 オレが怒っているのが判ったのだろう。上目遣いでシーラはオレを見上げた。
「サブロウはあたしに何にも話してくれないじゃないか。あたしだってチームの一員だよ。サブロウが何をしてるのか、知る権利はあるはずじゃない」
 そう言われてしまうと、オレも弱いところがある。確かにシーラの言うことは大部分で正しいから。