永遠の一瞬・8
 ルームサービスに電話をして食事が届く間も、タケシが帰ってくる気配はなかった。当然1人分しか注文していないから、オレは勝手に朝食を摂り、歯磨きをして、ベッドに寝転がった。食事を1人で摂ったのは別にタケシに意地悪をしている訳じゃない。万が一オレたちの正体がバレていて、食事に毒でも入っていたとしたら、全員一緒に倒れてはその後の証拠隠滅すらできない状況になりうるからだ。
 オレはリーダーだから、一番最初に食事をすることに決めている。まあ、オレの寝起きは悪いから、オレより先にタケシがレストランで食事を済ませている時の方が、はるかに多いのだけど。
 ベッドに寝転んだのとほぼ同時に、電話のベルが鳴った。
「はい、……はい、はい、……今日ですか? ……判りました。すぐに伺います。1時間くらい見ていただければ。……はい、では」
 オレは受話器を置かないで、すぐに内線番号を回した。
『はい』
「シーラ? タケシそっちにいる?」
 シーラのむっとしたような気配が伝わってくるようだ。
『あたしじゃダメなわけ?』
「いや、別にいいけど。そんじゃ、タケシに伝えてくれる? オレ、これからちょっと出かけてくるから」
『今日はどこにも出かけないって言ってたじゃない。どこに行くの?』
「そんなの別に訊くことないって」
『なんだよ! あたしに言えないようなところなの?』
「そうなの。子供には判らないところ」
  ―― ガチャン!!
 耳元で盛大な音をさせて、電話は切られていた。