永遠の一瞬・9
 すぐに軽くシャワーを浴びて、髪をセット。ラフ目のスーツに着替えて、ネクタイを締めた。姿見でひと通り点検をする。オレは長身でタケシほどごつくないから、そういう格好をすればけっこう見られるスタイルになる。ホストクラブにでも就職すればナンバーツーくらいにはなれそうな容姿だ。
 車のキーを持って、地下の駐車場に向かった。自分の車のキーを開けて運転席に座る。と、背後にわずかな気配を感じた。オレは1つため息をついて、振り返らないで言った。
「そんな隙間に隠れてないで出て来なさい」
 あきらめたのか、ルームミラーにシーラの姿が映った。
「どうして判ったんだよ」
「判るさ。お前の気配くらい判らないでどうする」
 オレたちはそれぞれの車の合鍵を互いに持ち合っているのだ。当然、シーラもオレの車のキーを持っているし、オレも2人の車のキーは持っている。
 オレは再びドアを開けて、シーラに声をかけながら降りた。
「鍵、かけとけよ」
 そう言って、オレはタケシの車が駐車されている方に向かった。この際しかたがないからタケシの車で我慢しよう。
「ちょっと! 待ってよ! ……なんで! このドアなんで開かないんだよ!!」
 後部座席にはチャイルドロックって機能がついてるんだよ。外からは開くけど、内側からは開かないんだ。これがタケシなら間違いなくロックを確認してから乗り込むんだけどね。シーラはそこまで頭が回らないらしい。
「……信じらんない!」
 信じられないのはこっちだ。オレはタケシの車に乗り込むと、エンジンをかけた。