永遠の一瞬・6
 タケシがタバコに火をつけて、ふうっと、ため息のように吐き出した。シーラがいなくなるととたんに静かになる。彼女はオレたちの中で、よく言えばムードメーカー、悪く言えば騒音メーカーだ。
「なんだってああいう言い方をするんだ」
 責められているとは思えないけれど、やっぱり責めてるんだろうか。タケシの低い声は、その辺の見極めがけっこうむずかしい。
「いや、単におもしろくて」
「いいかげんほんとのことを言ってやったらどうだ? あいつだってもう大人だろう。そのくらいの必要悪は理解できる年齢だ」
 自分の年を棚に上げてよく言うよな。タケシだってシーラと同じ18なんだ。
「なぐさめてやれば? お前の優しい心に胸を打たれてクラッとくるかもよ」
「やだね。めんどくせえ」
 そういうのをめんどくさがってるようじゃ、女なんかモノにできないって。タケシの奴も本人が思っているほど大人じゃないんだ。そういうオレも大人かどうかなんて判らない。……まあ、シーラよりははるかに大人だと思えるけど。
「判ってるんだろ? シーラの気持ち」
「タケシの気持ちなら知ってるけどね」
「あくまでシラを切るか。……まあ、好きにすりゃいい。どうなったってオレは知らねえ」
 立ち上がって、灰皿にタバコを押し付けて、タケシは部屋を出て行った。おそらくシーラの部屋に行ったのだろう。
 なんだかんだ言っても、タケシは人一倍優しい男だし、誰よりもシーラを好きなんだと思う。