永遠の一瞬・4
 顔を洗って、簡単に髪を撫で付けていると、シーラはやってきた。
「サブロウ、ちゃんと起きてる? タケシおはよう」
「ああ」
「サブロウは?」
「洗面所にいる。そろそろくるだろ」
 声が聞こえたから、オレは適当なところで切り上げて、洗面所から顔を出した。
 それまで、さんざんシーラのことを悪し様に言ってきたけれど、オレはシーラのことはかなりかわいいと思う。というか、シーラは美人だ。タケシと同じ18歳で、普通にしていればちょっと綺麗な女の子なのだけれど、化粧をして服装を替え、それなりの表情をすると、シーラは絶世の美女になる。だけど今日はただの打ち合わせだけで、外に出る予定はなかったから、シーラは化粧もせず男物のチェックのシャツとGパンをはいて、長い髪を肩にたらしたままオレたちの部屋に現われていた。
「おはよう、シーラ。今日も美人だね」
「おべっかなんか信じないよ。サブロウは口うまいんだから」
「おべっかじゃないって。君は世界一の美人だよ」
「判った、言い直すよ。 ―― ほんとのこと言われたってあたしぜんぜん嬉しくないよーだ」
 どちらかといえばぶっきらぼうな、男のようなしゃべり方で、シーラはそっぽを向いた。オレがからかっていることを判ってるから、そういうやりとりを本気に取るようなことはしないのだ。まだまだ子供だと思う。姿はすっかり育って、誰もが振り返るような美人なのだけれど、そして本人にはそういう自覚もあるのだけれど、シーラはオレの前では昔とぜんぜん変わらない子供だった。
 すごく、かわいいと思う。オレは彼女に世界で一番幸せな女の子になって欲しかった。