永遠の一瞬・3
「……判りました。喜んで肺ガンにならせていただきます。オレにも1本くれる?」
「勝手に吸えよ」
 着替えを終えたオレは、テーブルに置き放してあったケースから1本取り出して、くわえて火をつけた。未成年の喫煙が身体に及ぼす影響を知らないわけではないけれど、オレはそれほど長生きするつもりもないし、おそらくできないだろうから、あまり気にしなかった。どう考えたって肺がんで死ぬより先に、他の理由で死ぬ確率の方が高いのだ。
 しかし、タケシはどうしたって18歳の未成年には見えないけどな。付け加えるなら、オレは19で、奴よりも1つ年上なんだ。
「サブロウ、昨日整理した資料、どこにある」
「ああ、どこかな。昨日寝ながら眺めてたから」
 オレはベッドの方へ行って、バインダーにはさんだ資料を探した。もしかしたら見ながら眠っちまったのかもしれない。ベッドの裏へ回ると、枕もとの奥にそれらしきものが落ちているのが見えた。
「やっぱりここだ。タケシ、悪いんだけどベッド動かすの手伝ってくれるか?」
「……相変わらずだな。だらしねえ」
 文句を言いながらもタケシは手伝ってくれて、オレはベッドの隙間からバインダーを拾い上げた。タケシに手渡すと、歩きながらパラパラとめくった。
「川田ビルは前にも入ったことがあるからそれほど調べる必要はなさそうだな。決行はいつにする?」
 そう、タケシが聞いたのは、単にオレがリーダーだからだ。決行の日はほとんど決まっている。できるだけ早く見つかりにくい、週末土曜日の夜。
「シーラがきてからな。……のんびりしてる暇ないじゃん。とりあえず顔だけでも洗っとかないと、シーラに何言われるか」
 ほとんどとぼれてしまったタバコを灰皿に押し付けて、オレは洗面所に向かった。