永遠の一瞬・2
「……いいかげんに起きろよサブロウ」
 その、野太い声が、いつものオレの目覚し時計だ。寝返りを打ちながら伸びをして、枕もとの時計を探る。7時38分。確かにそろそろ起きる時間だな。
「おはよう、タケシ」
「早くねえよ。8時にはシーラがくるぜ。着替えの情けねえ姿、あいつに見られてもいいのか?」
「まあ、いまさら見られて減るモンじゃないけどね。ああ、そんなに睨むなって。起きるよ。起きるから」
 ベッドから跳ね起きて、タバコを吹かしてオレを睨みつけるタケシの前を通り過ぎると、オレは着替えを始めた。タケシは身長はオレとさほど変わらないのに、横は明らかにでかく、ごつくて巨大な男だ。そんな奴がプカーとか煙を噴きながら睨みつけている姿は実に怖い。子供の頃から一緒に育っていなければ、一目見て付き合いを考えるところだ。
「朝から不健康だね。何本目よ」
「さあ、数えてねえ。少なくとも片手じゃねえかな」
「お前と一緒の部屋じゃこっちが肺ガンに侵されそうだ。やっぱりタケシが一人部屋のほうがいいかもね」
「で? お前とシーラが同部屋か? そんな危険な」
「オレは何もしないよ」
「バーカ。そんな心配してねえよ。オレはサブロウがシーラに襲われねえか、それを心配してるんだ。……まあ、お前がいいなら好きにすりゃいいけどよ」
 確かに、オレがシーラに襲われる確率は、オレがシーラを襲うよりも、明らかに高いような気がした。