記憶�U・21
 あのリストは、葛城達也が危険人物に指定した人間のリストだ。つまり、葛城達也に関わる人間ということになる。その中に、ミオという人間が2人いる。そして、そのうちの1人を、オレは知っている。
 オレが見つけた名前は、その2人のうちのどちらかだ。オレはそのミオを知っているかもしれないし、知らないかもしれない。
 オレはミオの腕を握るのをいつの間にかやめていた。ミオがベッドに腰掛けたから、オレも隣に座る。その方が少しは話しやすいだろう。
「頭文字は? どっちが「K」なの?」
「それはどっちも同じよ。偶然だけど」
「名前も? 同じ名前なのも偶然なのか?」
「確かなことは言えないけど、たぶんそれは偶然ではないと思うわ。死んだミオがもしも違う名前だったら、その2人も違う名前だったかもしれない」
 人の名前を付けることができるのは親だ。オレが知っている葛城達也の子供は、オレを含めて3人。その2人のうちの1人がミオで、もう一人は確か勝美といった。ミオが死んだあと、葛城達也はまた子供を得たかもしれない。その子にミオという名前をつけるというのは、十分ありうる話だった。
 ミオが言った2人の「Mio_K」のうち、1人は葛城ミオなのかもしれない。それは葛城達也の子供で、もしかしたら、目の前にいるミオがその本人なのかもしれない。
 それは、ミオが本名を明かさない限り、判らないことなのだけれど。
 あ、だけど、ミオは言ったじゃないか。自分の父親はまだ30台だ、って。その父親は雇い主に監禁されていて会うことができなくて、オレの記憶が戻ったときに自由にしてもらえるんだ。葛城達也は44歳だ。それに、ミオが語る父親像と、葛城達也とは一致しない。
 やっぱりミオはあのリストにあった「Mio_K」とは、別人なのかもしれない。