記憶�U・15
 アフルストーンは、唯一と言っていい、オレの親友だった。オレと同じ研究所で7歳から16歳までを過ごして、オレの感覚ではほぼ1年前、研究所から出て両親の待つ自宅に戻っていった。研究所では遺伝子の研究ともう1つ、超能力の研究も行われていた。その超能力部門にいたのがアフルストーン、通称アフルだった。
 本名というのもあるのだけれど、オレはずっとアフルで通してきたし、あいつもそう呼ばれる方がいいと言っていたことがあったから、オレはそう呼んでいた。もちろん日本人で、年齢はオレよりも2歳ほど年上だった。
「……アフルストーンが、ここにいると思うの?」
 慎重にミオは言った。オレはミオの嘘を簡単に見破れる自分に今更ながら気付いていた。
「理論的考察。このプログラムを組めるのはアフル以外に考えられないからね。彼は今でも葛城達也の手先なんだな」
 ミオは、オレの言葉にどう反応していいのか、判らないようだった。
「判った。ミオにはそれを答える権限はないんだね。いいよ、雇い主の人に訊いてからで。いつ返事をもらえるかな」
「……今日の夜には、たぶん答えられるわ」
「ならそれまで待つよ。……ここも行き止まりか。いったいどこにあるんだ、オレの人生の奇跡のデータは」
 組織の事件、統計データ、工作員のデータ、それらの項目のほとんどは行き止まりになっている。以前のオレの記憶では、オレのデータは葛城達也と関わりのある人物のデータの中にあった。しかしそこも行き止まりだ。オレはずっと画面を移動させて、要注意人物の項目のところを開いてみた。
 そこは行き止まりではない。なるほど、オレはこの17年のうちにこちらのフォルダに移されていたわけだ。
 そこにあったのは、オレの名前だけではなかった。ちょっと見ただけで50人はいる。操作の指を止めて、オレはその名前を1つずつ、舐めるように見つめていった。