記憶�U・13
 接続が終わった後に現われた画面は、オレが見慣れたものだった。研究所の地下に眠っていたメインコンピュータの初期画面だ。イメージが少し違うと感じられるのは画面の解像度が変わっているせいだろう。うしろに立っているミオに、オレは言った。
「葛城達也の幼馴染の名前を入れたらこの画面になったんだ。黒人兵士とのハーフで、白人兵士に育てられた、日本国籍の男。J・K・Cが潰そうとしていたのは、この男を殺した人間が支配していた組織だ」
「藤井嵯峨がキーワードだったのね」
「知っているの?」
「あたしはほんとにいろいろ聞いてるのよ。葛城達也が生まれる前のこともね」
 ミオが葛城達也に雇われたのは、オレが思っているほど最近のことではないのかもしれない。もしかしたら数年も前から、葛城達也と親交があったのか。
 彼女の知識には、付け焼刃でない、身に染み込んでいるような雰囲気がある。
 オレは初期画面から、慣れた方法で画面を切り替えていった。こうして同じ画面で比べているとよく判る。17年前とは比べ物にならないくらい、コンピュータの世界は進化しているのだ。オレはさまざまに探りながら、時々行き止まりがあることに気付いていた。これはどういうことだろう。オレに探られまいとロックしているのか。それとも、もしかしたらこれはただそっくりに作ってあるだけで、オレがなじんできたメインコンピュータの内部とはまったく別のものなのだろうか。
 そうかもしれない。17年前にオレが知っていたものと、今現在のメインコンピュータとが同じであるほうがおかしいのだ。本物であればこんなに17年前の原形をとどめているはずがない。これはおそらく、オレの記憶を取り戻すためだけに作られたコンピュータなのだ。