真・祈りの巫女82
 まだ泣き続けているオミを部屋に残して食卓に戻ると、カーヤとタキとが椅子に腰掛けたまま、疲れた表情で黙り込んでいた。あたしが目を向けるとわずかに微笑みかけてくれる。2人とも、昨日から今日にかけていろいろなことがあって、かなり打ちのめされてしまったみたいだった。
「ユーナ、オミは?」
「うん、大丈夫。……少し独りになりたいみたいだから、頃合いを見て声をかけてあげてくれる?」
「判ったわ。ユーナは? 少し休まなくて大丈夫?」
「まだ休んでなんかいられないの。オミと約束したから」
 あたしが祈りの道具を準備していると、タキが椅子から立ち上がって言った。
「外が少し騒がしいな。祈りの巫女、先に行って様子を見てくるよ」
「え? いいわ。あたしも一緒に行く」
 そうして2人で宿舎を出ると、神殿前広場にかなり多くの村人が集まっているのが判ったの。ほとんどが男の人ばかりだったけれど、中には子供を連れた女の人もいる。彼らは何かを取り囲むようにしていて、中心にいる誰かに何かを訴えているみたいだった。
 タキと顔を見合わせて近づいていくと、そのうちの何人かがあたしに気づいた。
「祈りの巫女だ!」
「なに? 祈りの巫女だって?」
 その叫びに気づいた人たちがあっという間に近づいてきて、あたしを取り囲んでしまったんだ。
「祈りの巫女! あんた本当に神殿で祈ったのか? 祈りが神様に届くってのは嘘じゃないのか?」
「あいつのせいでうちの畑はめちゃくちゃになっちまったんだ。早くあの化け物を追い出してくれよ!」
「今夜もまた現われるんだろ? あんたの祈りで追い返すことはできないのかよ!」
 あたしはただ呆然と、人波から必死でかばってくれるタキの背中にしがみついていることしかできなかった。