祈りの巫女16
「強くなれると思ったんだ。武器の扱いを覚えて、獣と格闘して身体を鍛えたら、もしも何かがあった時に好きな人たちを守れる、って。父さんや母さんや、ユーナ。オレの好きな人たちを守りたいから、狩人になりたかったんだ」
「あたしも、リョウの好きな人に入ってるの?」
「なんで? 入れたらおかしいか?」
「なんか最近嫌われてる気がしたの。……変なの。嬉しいのに」
「嫌いになんかならないよ。ユーナは小さな女の子だから、守ってあげたいと思ったんだ。村で一番の狩人になれたら、どんな大きな獣が襲ってきたって追い返せる。オレはそういう男になりたいんだ。だから畑仕事じゃダメだった。狩人になるのが一番だと思ったんだ」
 リョウは、あたしを守ってくれる。あたしを守るために狩人になったんだ。嬉しいのに悲しかった。それがどうしてなのか、あたしには判らなかった。
「たぶんユーナにはそれが足りないんだと思うんだ」
 あたしは顔を上げて、リョウの顔を見つめた。
「それ?」
「うん、つまり、こうしたいからこれになりたい、って気持ちかな。役に立つとか、幸せになるとか、ぜんぶ人に言われたことだったり、あとから考えたことだろ? そうじゃなくて、一番最初にユーナが思うこと。オレが、強くなりたい!って思って狩人になったように、ユーナも、何かをしたい!って思ってから祈りの巫女にならないといけないんだ」
 あたしは、リョウの一番になりたい。
 リョウと毎日話せて、リョウのそばにいられて、リョウに邪魔にされない人になりたい。リョウのこと、何でも知りたい。リョウの秘密をあたしと2人だけの秘密にしたい。