記憶・25
「この後にも何回か引越しをするけど、とりあえずそれは置いておくわね。最初の引越しから2回目の引越しまでの間は2週間もなかった。そのあとも同じくらいで伊佐巳はまた別のところに引っ越してしまうの。この2回の引越しで、伊佐巳はそれぞれ別の人と出会うことになった。伊佐巳にとっては2人ともとても印象的な人よ。あたしは伊佐巳がその人たちと交わした会話までは詳しく知らない。でも、たぶんさっきの言葉は、その二人のうちのどちらかが言ったんだと思うわ」
 15歳のオレ。今のオレが思い出したその言葉が、15歳のオレが聞いた言葉なのだとしたら、発言者は少なくともミオではない訳だ。
「本当に? もしかしたら最近のオレが聞いた言葉かもしれないじゃないか」
「可能性はあるわね。でも、「義理の親子が結婚できない」なんて、普段誰でも使う言葉じゃないわ。伊佐巳が今まで出会った人のデータはあたしほとんど持ってるの。それらと照らし合わせると、こんな言葉を使いそうな人って、この二人くらいしか考えられないのよ」
 ミオの言葉に、オレはなんだか顔が赤くなってしまった気がした。なぜなら、オレがこの言葉を思い出したきっかけは、ミオとの関係をいろいろに想像しながら、「結婚」を頭において考えていたからなのだから。
「2人とも、女の子だった?」
 ミオはちょっと困ったような表情を見せた。
「うーん、できればそういう確認はしないで欲しいな。今回はあたしが教えちゃったようなものだけど」
 ミオはもしかしたら雇い主からいろいろな制約を受けているのかもしれないと、オレは思った。