真・祈りの巫女308
  ―― 祈りは、この世にあるすべてのものを超える。
 それは以前、守りの長老が言っていた言葉だった。あたしはその言葉を思い出していたの。おそらく守護の巫女が途中で言葉を切ったのも、彼女が同じことを思い出したからなんだ。
 あたしの祈りは時を超えていたのかもしれない。その考えに思い至って、あたしは愕然とした。1ヶ月どころの話じゃないんだ。だって、探求の巫女たちにいろいろ教えてくれた伝承者たちは、何100年も前から何代にも渡ってその話を言い伝えてきたんだから。
 探求の巫女、あなたはいったいどこから来たの? ……きっと西の海の向こうの島なんかじゃない。もっと遠くの、恐ろしいくらい遠くのどこかからやってきたんだ。シュウが言う別の世界って、きっと別の大陸や別の国という意味じゃない。
 探求の巫女、そしてシュウ、あなたたちはもしかして、未来からやってきたの……?
「 ―― いいわ。私には理解できそうにないから」
 守護の巫女がそう言って話を終わらせた気持ちは、あたしにはよく判った。周りにいた神官たちには判らなかったみたいで、また新たなざわめきが生まれていたけれど。
「要するに、あなたたち2人は、自分たちが体験した不思議な出来事の原因が知りたくてこの村に来たということね」
 シュウは守護の巫女の微妙に変化した声色にいくぶん警戒したみたいだった。
「それとあと、これ以上同じことが起こらないように結果を出しにきた、ってところかな」
「残念だけど、今の私たちにはその答えを教えてあげることはできないわ。本当に祈りの巫女の祈りが原因なのかどうか、それは私たちには判らない。おそらく当の祈りの巫女にも判らないことでしょう」
 守護の巫女に視線を向けられたあたしは、1つうなずくことで答えた。
「現実的な話をさせてもらうわね。今、私たちの村ではほかの土地の人たちの受け入れを一切拒否しているの。それはその人たちを守るためでもあるし、村を守るためでもあるわ。だから、よそ者であるあなたたちは、本当ならすぐにでもこの村を出てもらわなければならないの。これは有事が起こったときの村の決まりだから、たとえ探求の巫女と名乗っていたとしても従ってもらわなければならないわ」