近世の社会学 1 part 1
◎コントのサン=シモン批判
 鉄火の巷から一歩引き下がったところに「社会学」が成立するということは、まさにコントにおける社会学に当てはまる。オーギュスト・コント(1798~1857年)は、ギロチンが斬って斬って斬りまくった首から流れる血の湯気から、一歩も二歩も引き下がったところで学問的出発を行なったのである。彼は新時代フランスのエリート育成校エコール・ポリテクニークを退学したのち、サン=シモン侯爵の秘書となったが、やがて絶交して自己の道を歩み、1830年から42年にかけて『実証哲学講義』六巻を刊行することによって社会学の建設者となった。
 彼の師サン=シモン侯爵(1760~1825年)は、積極的な実践家であった。16歳で軍隊に入り、アメリカ独立戦争に義勇軍として参加、フランス革命中は亡命して思索に没頭し、新しい社会のあり方を考えた。
 そして結論として、18世紀の啓蒙哲学が<理性万能>を唱えて現実にアプローチする意欲も能力もなかったところに、革命の悲惨さの原因を見出したのである。
 次回に続きます。